中学生の「圧力」の問題に思う
「圧力」を学ぶことの「いろいろな意味」について、ランダムに。
圧力は、「圧力 = 力 / 面積」で求められるものだが、
これは、数限りなくある
単位○○当たりの△△
の一例になっている。
私は、「単位○○当たりの△△」こそが、多くの子供にとって大きな壁に
なっているような気がしてならない。(私には大きな壁だった。)
このようなものは、他に、
密度 = 単位体積当たりの質量
速さ = 単位時間当たりの移動距離
なんかがある。食塩水の濃度も仲間である。
私の印象では、これらのことは、公式として覚えれば、基本問題はなんとかなる。
しかし、公式を覚えただけで、ちゃんと理解していないと、いつまでたっても、
その先に進めないのではないだろうか。
ちょっと考えてみたい。
「単位○○当たりの△△」の基本問題は、
問題1
20人の子供に100個の飴玉を配る。
飴玉は1人何個になる?
のようなものではないかと思う。これは、
100 ÷ 20 = 5
よって、1人当たり5個
となる。
ここで、「1人当たり5個」=「単位人当たり5個」であり、
つまり、「単位○○当たりの△△」ということなのだ。
これは、たとえば、
問題2
20平方メートルの面に100N(ニュートン)の力が加わっている。
そのとき1平方メートル当たりに何Nの力が加わってる?
とまったく同じ構造である。
この問題の答えは、
100 ÷ 20 = 5
よって、1平方メートル当たり5N
となるだろう。
ところで、人は、「単位面積当たりに加わる力」を圧力とよぶ。
単位面積とは、たとえば、1平方メートルのことだ。
だから、
問題3
20平方メートルの面に100N(ニュートン)の力が加わっている。
そのときの圧力はいくら?
でも、まったく同じ計算をして答えは「1平方メートル当たり5N」となる。
ただ、「1平方メートル当たり5N」を「5Pa(パスカル)」などとも書くのだった。
もちろん、これは、「圧力 = 力 / 面積」の公式通りでもある。
ここまではやさしいだろう。
ところが、「圧力」に関しては、次のような問題も出る。
問題4
0.2平方メートルの面に100N(ニュートン)の力が加わっている。
そのときの圧力はいくら?
これも公式に入れれば簡単に解ける。
が、それはそれとして、さっきの説明とあっているのだろうか。
さっきの説明に従えば、この問題は、
問題5
0.2平方メートルの面に100N(ニュートン)の力が加わっている。
そのとき1平方メートル当たりに何Nの力が加わってる?
と同じ問題ということになる。
ここで、多くの子供たちが混乱するのではないかと思う。
しかし、この説明をいい加減にすると、たぶん、あいまいでぼや〜っとした
印象だけが残り、苦手意識にもつながっていくのではないかと思う。
(そして、「とにかく公式を覚えて使おう」と。)
結論を言うならば(と、言うほどもないけれど)、問題5でも、やはり、
することは、問題2と同じ(数値が違うだけ)なのだ。
100 ÷ 0.2 = 500
よって、1平方メートル当たり500N
である。
どうしてこのような計算でよいのか。という説明は、ここでは省略させて
いただくが、とにかく、これは正しいのだ。
(私は、「小数による割り算の不思議」とでもよんでよいものだと思う。
理由を知りたい人は、近くの数学好きの人に聞いてみよう。(後記あり))
そして、もちろん、圧力の公式とも一致する。
公式とはそういうものなのだから。
ちなみに、飴玉の場合なら、これは、次のような問題になる。
問題6
0.2人に100個の飴玉を配る。
飴玉は1人何個になる?
この日本語は絶対におかしい。だから、こんな問題は出ないだろう。
しかし、日本語を直した問題は出る。たとえば、
問題7
ある子供の持っている飴玉の1/5(つまり0.2)は100個。
その子の飴玉は全部で何個?
なんて具合だ。しかし、これは、日本語を直しただけで、問題6と同じものだ。
そして、その答えは、
100 ÷ 0.2 = 500
よって、その子の飴玉は全部で500個
(問題6に対してなら、「よって、1人当たり500個」)
となる。
要するに、「圧力」と「飴玉の分配」は、完全に同じ型の問題なのだ。
そのような理解が重要だと思う。
そのような理解ができれば、他の「単位○○当たりの△△」も同様に
理解できるようになると思うのだ。
なお、そのために重要なのは、「小数による割り算の理解」かもしれない。
一番重要と思われることはこれで全部。
ただし、雑談が続く。
後記:
0.2平方メートルの面に100N(ニュートン)の力が加わっている。
そのとき1平方メートル当たりに何Nの力が加わってる?
に対して、その答えが、なぜ、
100 ÷ 0.2 = 500
で出せるのか、ということをほったらかして終えるのもどうかと思った
のでコメント。
これに関しては、子供の学年や理解に応じて、いろいろな説明があると思うが、
私のもっとも基本的な「説明」は、まず、
割り算をすると単位当たりの量が出る
ということを、具体例を使って説得することである。
これは、(-1) x (-1) = 1 と同じで、
「その理由がよくよくわからなければ使ってはいけない公式」ではなく、
「なんとなく納得できたら使って慣れるべき公式」だと思う。
だから、「説明」というより「説得」と書いた。
そして、この事実は「一般公式」として(場合によっては、「詳しい説明は
もっと大人になってからね」と)「理解」させ、覚えさせても、「説明を
いい加減にした」ことにはならないと思うのだ。
この「事実」は前提の上で、「ほら、圧力(や濃度や速度)の公式でも、
この事実を使っているんだね」と教えてあげることが、正しい説明ではないかと、
私は思うのである。