伸展と強化について9

前回、「わかった感」を得たときの状況を列挙した。
これらの雑多な状況をみると、要するに、「今勉強したこと」が、別の何かと
つながったとき、「わかった感」があるのだと思う。
「別の何か」とは、「お母さんの話」でもいいし、また、「以前に勉強したこと」
でもよいのだと思う。
 
このような「わかった感」があると、実際には、それが、それほど重要でなくても
(ワシントンと松平定信の話なんか、普通の人には重要ではないと思う)、
本人のやる気はアップし、元気が出てくるので、すばらしいことだと思う。
(私が「わかった」と感じるポイントは、「学者が驚くような発見をしたとき」
 ではなく(だって、無理でしょ)、「本人的にちょっとうれしい発見をしたとき」
 であることに注意してほしい。)
 
私の「記憶」に関する見解をまとめると以下のようになる。
 
 覚えたことが以前に覚えた何かとつながると、わかったつもりになれる。
 わかったつもりになれれば、その知識(科目)を好きにもなれるし、
 それが、さらに勉強を続けていく糧にもなる。
 
そして、私の用語では、
 
 頭の中の知識の体系内で、知識間のつながりを増やしていくこと
 
を、「知識の体系の強化」とよんだのであった。
 
したがって、伸展期における私の方針を抽象的に言えば、
 
 知識の体系を伸展させたなら、すぐに強化せよ
 
ということである。普通の言葉で言うなら、
 
 何かを覚えたら、それと他の知識とのつながりを見つけよ
 
ということだ。
「新しく覚えたこと」と「すでに覚えていること」の間につながりが少なければ、
その「新しく覚えたこと」は、消えていってしまう可能性が高いと思うのだ。
そして、「覚えても忘れる」ということが続けば、当然、やる気もなくなって
しまうだろう。
 
ところで、前回挙げたような状況を意図的に起こせるだろうか。
それは、なかなか難しいと思う。
子供にとって、基本、それは、運次第だろうと思う。
あるいは、指導者(親や先生)が、「つながりそうな元ネタ」をあらかじめ、
用意してあげるということも考えられる。
が、それをやり続けるのは、普通の指導者には、やっぱり難しいだろうと思う。
 
すると、最後は、学習者(子供や生徒)にまかせるということになる。
子供たちにこう言うのだ。
 
「何かを覚えたら、それが、今までに習ったことや、見聞したことと
 つながっていないか、何かと関係はないか、考えてみなさい」
 
私は、これは、絶対に必要な指導だと思う。
そもそも、人間は、自分で考えなければいけないのだから。
 
が、上のように言われたって、何をやっていいかわからないのが、子供だろう。
だから、上記の方向で、しかし、より具体的で、実行できそうなことを
言ってあげる(やらせてあげる)べきだと思うのだ。
 
続く。次回最終回の予定。