自分と子供たちのための数学勉強法16

ちょっと仕切りなおして、具体例をば。
 
中学生(高校生も?)の数学ライフを彩るもののひとつに「傾き」という概念がある。
 
 傾き = (yの変化分)/(xの変化分)
 
というやつだ。
これは、わかってしまえば簡単極まりないのだが、直感レベルで理解するのは、
案外難しい。
 
「直感レベルで理解している」とは、、、
1次関数のグラフを見たら、苦痛や億劫(おっくう)感を一切感じることなく
その「傾き」を計算でき、仮に計算間違いをした場合でも、大きく違っていた場合、
グラフを見て、「あれ?こんな数字になるわけないじゃん?」と気がつく、
誰の前でも「相似な直角三角形の斜辺の傾き?当然同じだろ?」と言える、
「傾きとは変化の割合である」と理解している、
同じことだが、「速度とは、時間と距離のグラフの傾きである」と理解しているか、
言われればすぐ理解できる、、、ということだ。
 
「傾き」の考え方は非常に重要で、将来、三角比や微積分を習うときにも、
これを理解していないと、門前払いになってしまう。
 
もちろん、「傾き」を理解しているのは1000人に1人などというものでもない。
大人なら、たいていの人は、これまでの人生のどこかの段階で理解したはずだ。
しかし、決して簡単ではなかったのではないだろうか。
(簡単だった人。おめでとうございます。あなたは優秀です。)
 
私は、この概念を獲得するのに、ずいぶん苦労したような気がする。
それには、まず、定義そのままの問題をずいぶん解かされたように思う。
1次関数のグラフがあって、その傾きを求めよ、という問題だ。
「えーと、yの変化分をxの変化分で割るんだっけ?確か、そうだよな。
 それで、変化分ってのは、終わりの数から始めの数を引くんだったな。
 直線の中に2点をとって、、、どこだっけ?あ、どこでもいいんだっけ?
 ほんとかなあ。まあ、いいや。
 それで、計算しやすいところに、2点とったら、x座標がぁ・・・」
なんて、やっていたような気がする。
 
子供には、「傾き」の定義の意義がわからない。
だから、なかなか頭に入らない。
だから、計算するときには、苦労して定義を思い出さなければならず、それは、
ただただ億劫である。
計算し終わっても、何の達成感もなく、その答の意味もわからない。
意味がわからないから、右下がりのグラフの傾きを計算して、間違えて、
答を正にしてしまっても別になんとも思わない。
正解「傾き = 2」のところ、「傾き = 1/2」にしてしまい、他のグラフと
比べればすぐその間違いに気づくはずの場合でも、気がつかない。
そんなものではないだろうか。
 
それが、何度も、傾きの計算をさせられているうち、だんだん、
「傾きとは何か」ということが、しっかり頭に定着したような気がする。
 
偉い先生は、「何かを習ったら、自分でも、いろいろ考えてみなさい」と
おっしゃる。偉くもなんともない私でさえ、塾講師時代、そんなことを
おっしゃっていた。
「いろいろ考える」とは、あいまいだが、一番最初にやるべきことは、
「自分でいろいろなケースを考え、試してみる」ということではないだろうか。
しかし、それは、子供には難しい。(いや、大人の私にも難しい。)
 
だからこそ、先生方は、自分で「いろいろ考える」代わりに、それを解けば、
「いろいろ考えたことになる問題」を、私たちに出してくれるのだろう。
私の例で言えば、「傾きを計算するだけの問題」のことである。
このような問題を解いているとき、たとえ、それが「ミエミエ」の厳密反復型
(あるいは、数値変更反復型)であっても、私たちは、頭を使い、理解を
深めているのだと思う。
 
続く。