自分と子供たちのための数学勉強法9

前回の問題解説の続き。
 
問1は、三角形の面積の公式を身につけるための問題で、これは、すべての
三角形の面積の問題の基礎になるものだろう。で、もういいですよね。
 
問2も、同様のものと考えることができる。
が、これは、「三角形の等積変形」とよばれる技能を身に付けるための問題
とも言える。
△ABCの頂点Aを直線l上で左右にずらしていっても△ABCの面積は変わらない。
(高さが変わらないからですね。)
このような変形を「三角形の等積変形」という。(らしい。)
で、△DBCは、△ABCを等積変形したものだから、当然、同じ面積となる。
 
子供たちに教えるなら、ここで、「等積変形」をじっくり味わってもらいたい。
受験的な意味で言えば、「等積変形」は、よく出題されるネタだ。(たぶん。)
しかしまた、受験を離れても、これはおもしろい「現象」だと思う。
こういうことをよく経験しておけば、問3のような問題にも対処しやすくなると
思うのだ。
 
ところで、「三角形の等積変形」は、指導者が教えてあげず、子供が自ら見つけ
出すべきものだろうか。
それはケースバイケースだと思う。
私は、問1の類題を十分やったあとに自分で気が付けば思い切りほめてやれば
よいし、気が付かなければ教えてあげればよいのだと思う。
 
さて、問3だが、これが「応用問題風」だというのは、ひとつには、
「三角形の等積変形」が、見つけにくい形ではいっているからだ。
しかし、また、それだけでは解けない。
前回、それを「質問(△ABEと△DCEについての質問)に答えるために、直接
問われていないもの(△ABCと△DBC)を考える」という思考が必要、と書いた。
 
これを、今の場合に即して、もっと直接的・具体的に言うと、「2つの図形の
面積を比べるときに、それぞれに共通した部分を足して考えるとよいことが
ある」という思考が必要、、、と言うこともできるだろう。
問3では、「△ABEと△DCEを比べるのに、それぞれに△EBCを加えて考える」
ということだ。
このような思考は、一般には、教えてあげ、さらに経験をつませないと
なかなかできないのではないかと思う。
 
ここまでの主張をまとめると、次のようになる。
 
 問3が解けるようになるには、一般には、
 「三角形の等積変形」と
 「2つの図形の面積を比べるときに、それぞれに共通した部分を足して考える」
 という2つの技能をまず身に付けておかなければならない。
 (あるいは、「身に付けておくとよい」)
 
あるいは、逆に、「三角形の等積変形」の技能が身に付いている子供には、
(こここそが私の主張点なのだが)問3自体が、「2つの図形の面積を比べるときに、
それぞれに共通した部分を足して考える」という技能を身に付ける練習問題と
考えることができる、ということなのだ。
(問3は、このように2つの技能を結び付けているので、「2つの技能を結びつける」
 という別の技能の訓練にもなっていると思う。)
これが、問3を「応用問題風基礎的技能訓練問題」とよびたい理由である。
 
ちなみに、もし、「2つの図形の面積を比べるときに、それぞれに共通した部分を
足して考える」という技法だけを取り出して見せたいなら、たとえば、
次のような問題を出せばよいかもしれない。


青い部分と赤い部分だけに着目すると、途方にくれてしまいそうだが、それぞれに、
共通の部分を足してやると、青い部分は円に、赤い部分は長方形になるので、
「青い部分の面積 - 赤い部分の面積 = 円 - 長方形」と計算できるわけだ。
(えーと、100π - 168 cm^2 ・・・かな。)
 
私は、「数学の問題が解けるようになる」ということは、前回や今回紹介したような
問題を解くことから、(「三角形の等積変形」の利用のような)基礎的技能を身に
付けていくことではないかと思う。
つまり、数学の問題を解くためには、基礎的技能が必要。
基礎的技能を身に付けるためには、数学の問題を解くことが「必要」。
・・・ということで、いつもながらの(実は、私好みの?)論法ではある。
 
受験数学の問題に使われる技能は、12ページにまとめられるほど少なくはないと
思うが、しかし、それほどたくさんでもないと思う。
思えば、私は、受験生時代、そんな風に勉強していたと思う。
 
このような「考え方」には、当然(?)、次のような批判があるかと思う。
「結局、数学とは、訓練なのか?」
「受験に出るパターンをしらみつぶしに覚えていって使うということか?」
「それは、受験数学だけに通用する話ではないのか?」
実際、そのような批判の最先鋒にいたのは、受験生時代の私自身である。
そして、今も、その批判に、確信をもって反論することはできない。
だって、俺、数学者じゃないもん。
(せめて、高校時代の同級生で数学者になったやつとかいればいいのだが、
 そういう知り合いもいない。)
 
続きます。