私家版数学勉強法5 最終回

そんなにひっぱるものでもないのだが、なんとなく、止まっていた話。
今日で、最終回。
 
もう、何度も書いたが、「解析入門」の次の読んだのが「代数入門 堀田良之著」。
これは、20年前に挫折した本だが、その理由は、
 
 1.ツォルンの補題にめげた
 2.書いてあることを覚えようとしなかった
 3.だんだん難しくなる
 
であったと思う。
1は、志賀先生の本「無限への飛翔」で克服した。
2は、私家版数学勉強法3で書いたとおり。
今回の話は、3だ。
 
「代数入門」は、私には、どうしても、「だんだん難しくなる」と感じられた。
「どの本もそうだ」と言われれば、そうかもしれないが、「解析入門」は違う。
「解析入門」は、驚くべきことに、ペースが最後まで一定に(私には)思えるのだ。
が、「代数入門」は、証明がだんだん「不親切」になるように(私には)思える。
(ただし、あとにも書くが、その「不親切」を「悪い」というつもりはない。)
 
たとえば、「f : A → B」「g : B → A」なる準同型f、gに対し、
「gf : A → A」が恒等写像なら、BはIm fとKer gの直和に同型...ということが、
あっさり証明中に使われている(p128)。
その部分的な説明はあるのだが、私には、その説明は理解できなかった。
で、七転八倒しそうになったのだが、ふと思い立って、昔買っていた(笑)、
ホモロジー代数入門 岩井斉良著」を見てみると、証明が書いてあった(p12)。
説明はちゃんとしてあったのだから、それを理解できなかったのは私の責任である。
このような箇所が、他にもいくつかあり、実際、解決できていないところもある。
 
「代数入門」は、間違いなく、すばらしい本であって、批判するつもりは毛頭ない。
いや、ほんとーに、良い本だ。
ただ、私には、難しかったのだ。
どうして、そうなのか考えると、それは、著者の堀田先生が読者として想定して
いる方々より、私の方が、能力的に、ほら、まあ、つまり、あれだということだろう(泣)。
まあ、それは、そうだが、これは私家版。私なりに、私の原因を考えたい。
まず、「代数入門」のはじめの方は、かなりわかりやすかった。
それは、つまり、最初の方は、私も想定される読者だったのではないか。
そして、堀田先生は、その後、「読者が成長すること」を想定していたのではないか。
 
「この本は1年くらいかけて授業で使われることを想定している」とはじめに書いてある。
であるならば、若い数学科の学生諸君が1年間も同じところにとどまっているはずはない。
だから、教科書としては、後半に進むにつれ、だんだん難しくなっていって当然ではないか。
逆に、成長しない読者には、だんだん「不親切」になっていくように見えるわけだ。
(もちろん、「成長」とは、「他の本からも知識を得ること」ではない。
 ずばり、「(その分野における)数学的思考力の向上」のことである。)
堀田先生ご自身の言によったわけではなく、妄想かもしれないが、そんな気がする。
 
さて、私のぼんやりした記憶では、他にも、「だんだん難しくなる数学の本」は多数ある。
教科書であろうがなかろうが、やはり、「読者の成長」を想定する本は数多くあるのではないか。
それでは、私のような、もう成長なんか期待できないおっさんはどうすればよいだろう。
一つは、上に書いたように、他の本を調べるということだろう。
とは言え、これから本当にまったく成長しないなら、数学の本なんか読んでも仕方がない。
だから、自分なりの成長を考えなければいけないのだろう。
 
この話は、この辺で。
可能なら、いつの日か、「おっさんにとっての成長」を書きたい。