あなうめ感想文を擁護する5(最終回)

8.我が家で使った感想
私は、「あなうめ感想文」がよいと思ったので、この夏、我が家で使ってみた。
やり方は以下の通り。
 
・「実際の感想文を書かせる」というより、そのための「訓練」として実施した。
・「目的は、感想文の構成方法を学ぶことにある。内容は重視しない」と宣言した。
・わざわざ本を読ませるのではなく、「桃太郎」など、すでに知っている話を
 題材に書かせた。練習だから。
・テンプレートは同じものを複数コピーしてやらせた。
・やったのは、小学生の娘と中学生の息子。
 
[娘の反応]
最初の3つのテンプレートのテーマは、「主人公への共感」「主人公へのあこがれ」
「自分には無い主人公の長所」だった。「主人公への共感」はすらすら書いた。
このテンプレートは、娘の性格にあったようだ。
しかし、「主人公へのあこがれ」「自分には無い主人公の長所」でつまった。
娘は、かなりの自信家である。
そのため、「他人へのあこがれ」や「自分に無い長所」など書きたくないのだ。
(その性格は「どうしたもんか」と思う。が、それは別の話。)
それで、はじめは、「書けない」と言っていた。
そこで、私は、全テンプレートを、「主人公への共感」に書き直そうと思った。
(テンプレートであればこそ、それは簡単に出来る!)
だが、おもしろいことに、その前に、娘は、「この感想文を書いているのは
私ではない」と言い出し、「自分ではない誰か」が書くであろう感想文を書き出した。
「他人になったつもりで書く感想文」というのは、なかなかおもしろいと思った。
(ただし、それを続けさせるつもりはない。)
 
テンプレートを使ったおかげで、娘とは、「内容」そのものには触れず、形式的な
整合性の話ができた。
「はじめに、主人公の冷静さをほめたのに、そのすぐあとでは、まったく別の
ことを書いちゃってるよね。これって、読む人が混乱しない?」...なんて話だ。
これは、私の想定外の効果だった。
 
[息子の反応]
どう見ても小学生向きの本をやらされて不満を言うかと思ったが、ちゃんとやった。
と言うか、本気で悩んでいた。
娘は、「桃太郎」のようなよく知られたお話を題材に選び、記憶だけで書くので、
数分で終わらせてしまう(「それでよい」と言っておいた)のだが、息子は、
実際の本を引っ張り出し、うんうん悩む。
私が「とにかくあなを埋めてくれればいいんだから悩むなよ」(時間もないんだし)
と言っても、いろいろ考えたようだ。
と言って、すばらしい感想文ができたわけではない。
が、たとえば、以前に読んだ「ああ無情」を引っ張り出して悩んでいるときに、
「司教さんのあのセリフをどう思った?」なんて、会話ができた。
それは、とてもよかったように思う。
 
やってみてわかったのだが、ひとつのテンプレートを複数の物語に適用するのは、
やはり、かなり難しい。そこで、自然に、「テンプレートのカスタマイズ」を、
考えることになる。いずれ、自由にカスタマイズできるようになれば、それは、
「あなうめからの卒業」であり、「自分のものになった」と言えるのだろう。
(これは、著者も当然想定していたことではないだろうか。)
 
以上です。
 
後記:
上は、あなうめ感想文実施の途中で書いたもの。
(というか、8月18日現在終わっていない。)
が、最近、気づいたことがあるので、補足。
 
はじめた頃、娘は2、3分で、息子は5、6分で終わらせていた。
それは、まったくの遊び感覚だった。(ま、そんなつもりだった。)
しかし、だんだん時間がかかるようになってきた。
今では、二人とも、30分以上かかる。
そうなったひとつの理由は、「ネタ切れ」である。
つまり、「本を読まずに思い出して書け」と言ったのだが、思い出せる本が
少なくなってきたのだ。
で、最近は、「どの本にしようか」でけっこう時間がかかる。
それから本が決まっても、なかなか筆が進まない。
畳の上をのたうちまわったりする。
 
これは、いい傾向だと思った。
実際のところ、できあがるものは、はじめた頃と比べ、少しもよくなっていない
(いつも、魔法の方法なんてないんだ。と思う。)
「何枚もやって、どうして、整合性すら取れないんだ」とも思うが、たぶん、
ここがこらえどころではないかと思っている。
目に見える進歩はないが、たぶん、見えないところで進歩しているのだろうと。
 
実は、娘は、「あなうめ感想文」をはじめた頃に、本番(学校の宿題としての
感想文)を終わらせてしまった。
「いや、ちょっと待て、もう少し練習してから」と思ったが、娘は気が早い。
できたものは、ちょっとだけ、その頃やっていた「あなうめ感想文」の
テンプレートの風味があって、どうしたものかとも思ったが、まあ、ちゃんと
やっていた証拠だし、それでよかったと思う。
息子の本番はこれからで、それは、楽しみにしている。