あなうめ感想文を擁護する4

7.私が「あなうめ感想文」がよいと思う理由
多くの「感想文の参考書」は、いくつかの物語を例にして、「評価される感想文」
の書き方を解説しているようだ。
たとえば、「うさぎとかめ」が題材なら、次のような問い(ヒント)が書いて
あったりする。
 
 ・どうしてこの本を選んだのですか
 ・走る前のうさぎの態度をどう思いましたか
 ・走る前のかめの態度をどう思いましたか
 ・うさぎが寝てしまったとき、あなたはどう思いましたか
 ・あなたはうさぎとかめのどちらに近いと思いますか
 ・このお話を読んで、何か考えたことはありますか
 
これらの問いの答えを考え、それをまとめると、「良い感想文」が書ける。
これは、「文章の構成法の指導」でもあるが、「読み方(内容)の指導」でもある。
極論すれば、
「この本を読んだら、ここに着目しなければいけない」
「この話では、ここに感動するべきだ」
という指導であろうと思う。
このような指導は、必要であると思う。
したがって、これらの「感想文の参考書」は、良書であると思うのだ。
 
ただ、このような指導は、もっと短い文章を題材に、学校の先生が何時間もかけて
やっていることだ。
こういうことが苦手な子供は、たぶん、このような本を読んでも、あるいは、この
ような本を読んだ親に指導されても、そうそうできないのではないか、と思うのだ。
たとえば、「桃太郎」が実際の課題だったとしよう。
その場合、上のような問いを「桃太郎」について、自分で考えなければならない。
しかし、それは、「感想文が苦手な子供」には、決して、やさしくないだろう。
「うさぎとかめ」は「うさぎとかめ」であって、その解説をしてもらっても、
「桃太郎」の読み方は別だからだ。
(もちろん、本当は、「桃太郎」に対する上のような問いを自分で発せられる
 ようになってもらいたいし、それができないと言っているのでもない。
 本や親の短期間の指導で、感想文の苦手な子供がそうなるのは、難しいだろう
 と言っているのだ。
 逆に、感想文の得意な子供は、このような本を読むことで、ますます得意に
 なっていくだろうと思う。)
 
さて、「あなうめ感想文」。
「あなうめ感想文」は、「要所々々が空欄になった感想文」(ここでは、テンプレートと
よぶ)があり、個々の本について、その空欄を埋めていけば、感想文が完成する仕組みだ。
埋めていく空欄の内容は、「主人公の性格」「印象に残ったセリフ」などだ。
私が驚いたのは、ひとつのテンプレートを複数の物語に適用している点だ。
つまり、「うさぎとかめ」も他の物語も、まったく同じ「問い」を用いて、感想文が
書けるようになっているのだ。
この本は、文章の構成法に焦点を当てているのだと思う。
逆に、本の読み取りに関する指導は、あまりないように思う。
まったく同じ「問い」を使う以上、細やかな「読み取りの指導」にはならないからだ。
 
つまり、この本は、内容より形式を優先しているのだ。
これは、「評価される感想文」というより、「単なる感想文」の書き方を示しているの
ではないかと思う。
そういう意味で、この本は、他の本より「やさしい」と思える。方針さえ示してあげれば、
あまり感想文が得意でない子供でも、進めていくこともできるのではないか。
ただし、それで、「評価される感想文」になるわけではない。
私は、評価されなくてもいいから、とにかく感想文を書いてもらいたいと思うので、
この本を「すばらしい」と思うのだ。
 
そして、さらに、期待できることがある。
それは、「世の中の多くの文章は、簡単なテンプレートを用いて書くことができる」という
身もふたも無い、しかし、非常に重要な事実を、実感を持って学んでもらえるのではないか、
ということなのだ。
 
付記:
一応、誤解の無いように書いておきます。
・「あなうめ感想文」は、最後の方で、「表現の技法」や「あなうめからの卒業方法」
 の説明もしています。その内容も、私には、極めて適切なものに思えます。
・「あなうめ感想文」は、大変すばらしいと思います。
 が、まったく、不満がないわけではありません。(それは、どの本でも同じでしょう。)
・類書があるかどうか知りません。見落としがあるなら、ご連絡ください。
・この節の最初に書いたような「感想文の参考書」を否定する気持ちはありません。
 みな良書だと思います。