私が優等生になった理由

簡単に言うと、転校である。そこそこ都会の小学校からかなり田舎の小学校に。
 
小学校の低学年の頃は、どちらかというと、勉強のできない方だったと思う。
掛け算九九を覚えたのは、クラスでも本当に最後の方で、つらかった。
それから、転校の直前には、中の上くらいにはなっていたかもしれない。
それにしても、私は自分を「勉強のできる子」と本気で思ったことは、一度もなかった。
宿題以外に勉強したことはなく、「宿題以外に勉強する」という発想もなかった。
ま、なんて言うか、普通の子である。
 
ところが、転校した先の小学校では、何もしていないのに、いきなり優等生になってしまった。
元いた小学校は、人口100万ほどのそこそこ都会(でも、田んぼはあったよ)にあり、
また、近隣にお役所の官舎があり、そこの子供たちが、各クラスに10名くらいいて、
みんな「無敵の優等生」だった。
彼らのおかげで、他の子供たち(私たち)は、優等生になれる気はしなかったが、
全体のレベルも引き上げられていたのだと思う。
 
一方、転入先の小学校は、かなりの田舎にあり、その田舎の中でもお勉強のできない小学校だった。
いや、私の誇るべき出身小学校であり、あそここそ私の故郷なので、悪口を言いたいのではない。
ただ、事実としてそうなのだ。
そうわかったのは、近隣の小学校の出身者から、「え?おまえ、あの小学校の出身なの?」
「あそこの子って勉強できないよな」「何考えてるかわかんない子たちだろ」
「怖くて近寄りたくなかったよ」などと言われたからだ。
 
で、元の小学校では普通だった私は、その学校でトップクラスの優等生になってしまったのだ。
転校早々、授業中に先生に質問され、それに何気なく答えたら、クラス中がパニックのように吠えた。
「え〜〜〜。なんで、そんな難しい問題が解けるんだ〜」「やっぱ、東京モンは違う」とか。
(私は東京出身でもなんでもない。彼らは、都会=東京と考えていただけだ。)
さらに先生が「おまえらも見習え」なんて言うのだ。
 
私は本当にびっくりしてしまった。
で、同時期に転校してきた生徒とツートップに祭り上げられたのだが、彼の方は、
元から優等生だったそうで、彼から優等生の立ち居振る舞い(の一部)を学んだのだった。
そして、ほめられるのがうれしくて勉強するようになったわけである。