理系大学生のための数学入門的な何か(?)5

(大学初年級で習う)線形代数には、解析のような「哲学的な難しさ」がない。
「哲学的難しさ」とは、たとえば、「(固定した)任意の実数より大きい自然数が必ず存在する」
アルキメデスの原理)なんてことを、なぜ証明する必要があるんだろうか、
と思い悩む必要はないということだ。
やるべきことは、中学生でもできる(シグマを使うから高校生かな?)ただの計算だ。
(考えてみると、「計算すると答が出る」というのはすばらしいことだが。)
 
具体的にあるのは、行列の操作、行列式逆行列、数ベクトル、線形空間などだ。
個人的には、
 
 線形空間 → 1次変換 → 行列の操作・逆行列 → ・・・
 
と進んでほしいと思う。
要するにガンガン抽象論で攻めてほしいと切に思う。
 
のだが、多くの教科書はそうなっていない。
かの有名な佐竹一郎先生の「線形代数学」は
 
 数ベクトル・行列 → 行列式線型空間 → ・・・
 
となっている。
要するに、高校で習うベクトルの話をまずして、それから行列式の公式を徹底的にやって、
それから一般論に進んでいる。
これは、「はじめから抽象論をやられたらわかりにくいだろう」という配慮だと思う。
(が、個人的には行列の計算にモチベーションがわかないので、思い切り退屈しそうである。
 もちろん、個人的に、である。)
私の大学時代の教科書もだいたいこんな感じ(この簡易版)だったと思う。
 
「連立1次方程式の話」からはじまるものもあるらしい。
これも、抽象論を避け、具体的な話から入ろうということなのだろう。
 
ちなみに、私が大学生だったときには、齋藤正彦「線型代数入門」というのが他のクラスで
使われていて、大人気だった。
何度も「買ってみようか」と思ったが、なんとなく意地になって買わなかった。
(私は私の先生へのloyaltyを守ったのだ。)
某所の書評を見ると絶賛されてますなぁ。
 
ただ、どんな入り方をしても結局やることは同じである。(と、思う。)
解析でもそんな話をしたが、解析より、「やること」ははっきりしていて、本当に、
順番のみの問題だろうと思うのだ。(素人のくせに、ね。)
 
物理系の少年少女にモチベーションを与えるのは、実は簡単である。
量子力学も相対論も線形代数が基礎だからね」と言へばよいのである。
18歳の私にそう言ってほしかった(笑)。
数学系の少年少女には・・・、まあ、君たち数学好きなんだよね。
工学系のことはよくわからないが、連立1次方程式が好きな人を私は知っている。
だから、そういうモチベーションがあるかもしれない。(未確認)