たぶん前に書いた話

学生時代、アルバイトで塾講師をしていた。
ある塾(自称、エリート養成塾)での話。
代講で1回かぎり算数のクラスを持った。
で、用意されていた文章問題を出したところ、ある生徒が突然
「先生、これ足すんですか、掛けるんですか?」と聞いてきた。
最初はギャグだと思ったので笑ってしまい、「まあ、考えてみてよ」と言ったところ、
彼は真剣だったようで怒り出した。
「教えてください。足すか掛けるかわからなければ答が出せません」と。
 
私は相当驚いてしまったのだが、「それを考えるのが算数だよ」とやさしく辛抱強く言っても、
彼の怒りは収まらなかった。「先生が教えてくれないからできない!」と。
それから「わかった。先生がそんな態度を取るということは、本当は引くんだ」などと。
(大昔なので正確ではないですが、本当にこんな感じでした。)
 
私は、このような悲劇こそなんとかするべきであると思う。
 
しかるに、先生をいろいろ批判する人の多くはそういう子供の存在自体を知らないのだと思う。
(「口に出してはいけないアレ」のこととか。)
当然、どういう具合にそうなるかも。
また一方で、そういう子供が長じて批判者になっているケースも多々ある気がする。
「よくできる子」しか知らない、あるいは、「よくできる子=普通の子」と思っている人たちと
「子供時代算数ができなかった人」たちの連合軍は手強く、彼らの善意によって「できない子」が
再生産されているような気がしてならない。