ある思ひ出 2

そのAさん、私が中学生のときに、数学を教えてくれたことがある。仕事の合間に。
(上記の話は、高校に受かったあと、「ところで・・・」という話だった。)
 
私は言われるままに、学校の帰り道に会社の事務室に行った。
すると数学の問題集を渡され、「やってごらん」と言う。
「え?教えてくれるんじゃなかったの?」と思ったのだが、Aさんはそのままどこかに
行ってしまった。
見てみると、いろいろ難しい高校の入試問題をまとめたやつ(難問集というやつ)だった。
(なぜか「○○○○女子大付属高校」というのが鮮烈に記憶に残っている。)
で、「こんなん解けるかぁっ」とやさぐれた気持ちでしばらくいたのだが、誰もいない
事務室で他にやることもなく、しょうがないので問題にチャレンジしてみた。
 
と、どうしたわけか、「あれ?これって、こうするのかな?あれ?解けちゃうぞ」と
いう具合に解けるのだった。
一応言っておくと、普通の受験塾にも行っていたので、もともと素養がなかったわけではない。
ただ、難問集はとても難しいと思っていたので、自分でもびっくりだった。
2、3題解いたところでAさんが戻ってきて、「あれ?解けるんだね」と。
え?いや、なに?みたいな。
 
それからもう一度そこに行って同じようなことをしたと思うのだが、Aさんから
「ここ来なくていいんじゃない?」と言われ、それっきりとなった。
 
私としては、「で、あれなんだったの?」と思っていた。
しかし、あの「あれ?解けちゃうぞ」の瞬間はものすごく貴重だったのかもしれない。
だから、今は、Aさんにとても感謝しているのである。
当時、大学出たて(だからこそ、仕事中なのに数学の話なんかしたのだろう)の若者だった
と思うが、今は、もう引退されている年齢だと思う。