ちょっとSF 4

私自身アルバイトでだが、塾の講師をしていたことがある。
子供たちも塾のお世話になっている。
したがって、塾を否定する気は全然ない。
 
しかし、塾は万能ではない。
たとえば、普通の塾は、なるべく短期間で結果を出すことが求められる。
塾に入れても成績が上がらないと、「あの塾はだめ」という評判すらいただきかねない。
だから、塾は、経営的に、なるべく早く結果を出そうとすると思う。
(もちろん、なんにでも例外はあると思うが。)
 
しかし、数学は、「短期間の成果」が当てにならない、むしろ、有害になる科目だと思う。
塾の講師をしていて思ったことがある。
数学が得意な子は、スポンジが水をすうように教えたことを吸収し、あとは勝手に伸びて行く。
一方、数学が不得意な子には何度も同じことを説明させられ、その都度、会心の笑顔で
「わかった!」と言われるのだが、実は全然わかっていない、なんてことがよく起こった。
そういう子は、気の毒なことだが、根本的なところで、数学を勘違いしているように思う。
 
そういう子に、「短期間の成果」を上げさせることは、実は、簡単である。
とにかく、基本がわかっていないのだから、基本問題を徹底的にやらせて、逆に応用問題を
避けさせるのである。
そういうときの先生の言い方は決まっている。
「とりあえず、この問題の解き方を覚えなさい」である。
すると、0点に近かった点数が、一挙に、70点くらいに上がることもあると思う。
そうなったら、本人もうれしいに違いない。
その「うれしさ」は大事にしてあげたい。
 
しかし、である。
そういうことは、たいてい、長くは続かないと思う。
それで「数学の小テストでそこそこ良い点を取る方法」を身に付けることはできるかも
しれない(それすら身に付けられない子も多い)が、「数学に正面から向き合う方法」は
全然学べていないのである。
すると、中学生の間はまだしも、高校生になったらきつかろうと思うのだ。
 
私は、上記のような「学習法」は誤りだと思う。
学習法ですらないと思う。
しかし、割と多くの子供が、月謝を払って、この間違った「学習法」を指導され、
結果的に、より数学ができなくなっているのではないかと思うのだ。
 
数学は勉強をしはじめてから成績が上がりだすまで、たぶん、3ヶ月くらいはかかると思う。
それは、「最初の3か月間はゆっくりしか成績が上がらない」という意味ではない。
そういう場合もあるだろうが、それはラッキーなケースだ。
「成績はずっと下がり続け、3か月後にようやく上を向く」というケースもあるのだ。

その場合、「上を向くときの成績」は、「勉強をし始めのときの成績」よりずっと悪い。
それでも、それは、「短期間の成果を求める学習法」よりはるかに良いもの(正しい学習法)
であると思うのである。
しかし、これを実践できる塾(これに耐えられる塾)は少ない。