ちょっとSF 5

どういう子が「数学が得意(初級)」なのか、私なりのイメージはある。
しかし、その本質がどこにあるかまでは、よくわからない。
なので、思いつくことを書いてみたい。
それは、以下のような子ではないかと思う。
 
・数学的な問題を嫌わない。
 「10cmのロープを100等分する」とか「0〜9までの数を並べて整数を作る」とか
 「頭の数と足の数から鶴と亀の数をあてる」といった、およそ、何の役に
 立つんだかわからない、普通の人(?)には、全然面白くない問題を嫌わない。
 それどころか、(いつもではないだろうが)おもしろいとさえ感じる。
 
・「だいたいわかった」という状態を放置できない。
 100%わからないと気持ちが悪い。
 「9割くらいわかったから、あとはまあいいか」とは思えない。
 
・何段階かの思考のステップを「がまん」して追える。
 問題が解けるとうれしいので、「がまん」と感じない場合もある。
 しかし、いずれにしても、「数学が得意でない人」が投げ出してしまうような
 ステップを「数学が得意な人(初級)」は、ちゃんと追える。
 
数学を教えていて、問題になるのは、「思考のステップを追えるか」である。
たとえば、次のような問題(高1、2対象)を考えよう。ちょっと難し目である。
 
・・・・・問題・・・・・
f(x) = x^2 (0 ≤ x ≤ 2)
    (x - 4)^2 (2 ≤ x ≤ 4)
 
のとき、0 ≤ x ≤ 4 の範囲で、f(f(x))を求めよ。
・・・・・・・・・・・・
  
これは、じみ〜に退屈極まりない思考のステップを繰り返すだけで解ける。
ただし、高校一年生がはじめてこういう問題を見たら、面食らうと思う。
それはいい。
しかし、説明をされたら、どうだろうか。
「数学が得意な人(初級)」は、欣喜雀躍して聞くだろうか?
そういう人もいるだろうけれど、がまんして聞く人もいるだろうと思う。
 
ただ、どちらにしても、そのステップを追える人が「数学が得意な人(初級)」なのだ。
そのステップが追えないようだと、どんなに数学の公式を覚えても、「難しい問題」は
解けるようにならないと思う。
 
こういう問題を説明して、「難しい」「わからない」と言われると、数学の先生は
絶望的な気持ちになると思う。
なぜかと言うと、この問題は、本質的に少しも難しくないからである。
思いつくかどうかの話はしていない。一応、解き方、考え方の説明をした後の話である。
説明を聞けば、それはただの地道な作業でしかないのだ。
だから、それを「面倒」と感じるのはわかる。
しかし「難しい」と言われると、本当のところ、それ以上説明ができない。
 
それは、たとえば、以下のような野球部コーチが感じることに近いのではないか。
(以下の文を野球部のコーチになった気持ちで読んでいただきたい。)
「野球部に新入生が来た。
 "ボールを投げるからそれを取って投げ返せ"と言ったら、できない。
 こういう風に取って、こういう風に投げるんだ言ったら、"難しい"と言われた。
 ボールの取り方と投げ方を別々に教えたら、それぞれできるようになった。
 そこで、また、"ボールを投げるからそれを取って投げ返せ"と言ったら、また、
 "難しい"と言われた」
 
私は、決して「数学が得意でない人」をバカにしたいのではない。
まず、事実を述べたいのだ。
(「数学ができる人」、特に、数学の先生は、ここに書いたようなことは、
 思っていても口に出さない人が多い。それどころか、逆のことを言ったりする。
 それを「やさしさ」と思っているフシがあるが、私にそういう「やさしさ」はない。)
そして、それに納得してもらえたなら、「数学が得意でない人」には、それでも
数学の勉強を続けたいのかどうか決めていただき、もし、続けたいなら、
こっち側の人になっていただくしかなく、その方法を検討したいと思うのである。