岬め○り

妻と結婚してよかったことは数限りない。
その中にはちょっとした小さいこともある。
 
中学生の頃、「岬○ぐり」という歌を聞いて、かなりの衝撃を受けた。
「恋人と一緒に行きたかった岬に、一緒には行けなくなったから今一人で来ている」と
いう歌である。
私は、その恋人は死んだんだと思った。
そして、好きな人が死んでしまうというのは、どんなに恐ろしく悲しいことだろうかと思った。
「とてもいい曲なんだけど、悲しい」とずっと思っていた。
 
妻と結婚して、この歌のことが話題になった。
すると妻の奴、にべもなく、「え?死んでないでしょ?ただ振られただけでしょ?」と。
えーーー。ここで再び衝撃が・・・。
しかし、である。
それはうれしい。
そうか。死んでなかったのか・・・と思った。
 
この安堵感をどういったらいいのだろう。
たとえて言うなら、少年漫画で、死んだと思っていたライバルが奇跡的に生きていて
主人公の前に現れた時のような安堵感が。
(そう言えば、志々尾限は生き返らなかったなぁ。)
ああ、妻と結婚してよかった、と思ったのである。
 
月日は流れ、先日、妻が70年代歌謡曲集を買ってきた。
なかに「岬めぐり」がある。
私は、自分の中学時代と妻のことを同時に考えながら、しみじみと聞いていたのである。
すると、妻がやってきて言う。
「それ、失恋の歌よ。失恋。失恋してうじうじしてんの」。
え。いや。そんな言い方しなくても、、、。
さらに、「こーゆーのを、モーニングって言うの。モーニング」と吐き捨てるように。
 
えーと、モーニングとはmorningではなくmourningですな。
うーん。とにかく、結婚してよかったよ。
長生きしておくれ。