「つかんだ」ということ(子供編) 最終回

「解法を覚える」ということは、「問題ごとに解法を覚える」ということだ。
「解法」も「考え方」の一種だから、問題ごとに解法を覚えていくと、
頭の中には、次のような構造ができることになるのだろう。
(もちろん、模式図である。)
 

図1
 
ここで、「問題Aの解法」を「考え方A」などと書いた。
一方、「1つの考え方で多くの問題を解けるようになる」というのは、頭の中に、
次のような構造を作る、ということだろう。
 

図2
 
「考え方α」が、「多くの問題を統一的に解くことができる考え方」を表している。
 
なるほど、こんなことができれば、すばらしい。
問題は、どうすればよいか、だ。
 
現在私が考えている結論は
 
 「考え方α」のようなものがあること
  をなんとかして伝える
 
である。
一番重要なことは、それだけである。
それさえ伝えることができれば、あとは、本人がなんとかしてくれるだろうと思う。
 
ただし、「伝える」というのは、ただ「言葉で言って聞かせる」ということではない。
いや、もちろん、言葉でも言って聞かせるべきだが、それで伝わる保証はないのだ。
 
私は、「考え方αのようなものが存在する」ということを伝えるのに、
直接的な方法は、おそらくないのだと思う。
(あれば、誰かが発表してくれているだろうから。)
私たちにできることは、いろいろな問題(つまり、問題A、…、問題Z)を具体的に
解いて見せるか、解かせてみることだけだ。
つまり、具体的に教えられるのは、いろいろな問題の解法(つまり、考え方A、…、
考え方Z)の方なのだ。
 
実は、私は、そのような具体的な指導の中でこそ、子供たちは、考え方αをつかんで
くれるのではないかと思う。
それは、考え方A、…、考え方Zを教えて、あとは、子ども自身が考え方αを
つかむのを待つということである。
もちろん、側面支援はできる限りしたいが、基本は、「待つ」になると思う。
それは模式的に書けば、次のような構造を作るということだ。
 

図3
 
矢印は、「考え方Aなどから考え方αを見つける」という変化を表している。
そして、一度、上記のような構造が頭の中にできれば、徐々に不要な考え方は
淘汰され、図2のような状態になっていくのではないかと思う。
 
なお、「図3の方法では、結局、すべての解法を学ばなければならない
のではないか」という批判があるかもしれない。
しかし、たとえば、1つの分野でそれをやれば、他の分野を学ぶときには、
たぶん、もう少し効率がよくなっているように思う。
そして、それを繰り返せば、いずれ、たとえば「考え方A」のみから
「考え方α」が見つけ出せるようになるのではないだろうか。
 
それは、次のようになるということだ。
 

図4
 
たぶん、普通は、図3と図4の中間を通ることになると思う。
もちろん、そうやって「つかむ」ことができれば、いずれ、いろいろな分野で
ダイレクトに図2に到達できるようになるかもしれない。
ただし、重要なことは、「つかむ」ことであって、その経緯ではない。
と思う。
 
終了。