一元一次方程式に思う

最近、娘には、一元一次方程式を教えている。
授業よりちょっと早めだが、先取り学習というより、もう教えてもよい時期だと思う。
(正直、もう待ってられない。はやく娘と数学の会話がしたいのだ。)
で、問題集の問題をゆっくり解いていっているのだが、ちょっと考えた。
 
一元一次方程式は、中学生が最初に出会う、数学らしい数学だと思う。
だから、ぜひ、感動してほしいのだが、やってみると難しい。
(今回の話は、このブログにすでに書いたこととかなりダブっています。)
 
一元一次方程式の、素直な問題(基本問題)は、たとえば、
「公園に子供が9人います。公園にいる子供の数は、大人の数の2倍より、
 3少ないです。大人は何人いますか」などというものだ。
この場合、大人の数をxとして、
   2 x - 3 = 9
で解くことができる。6人ですね。
 
しかし、これは方程式を使わなくてもすぐ出せる。
   (9 + 3) ÷ 2 = 6
このような問題は、「方程式というものをはじめに説明するために良い問題」だが、
「方程式の威力を見せるのに良い問題」ではないのだ。
このような問題を最初にやることは意義深いことだが、いつまでやっていても、
方程式的思考は身につかないと思う。 
(と言うか、意外に大事な「基本的算数力」を失わせてしまうような気がする。
 この問題は、(9 + 3) ÷ 2 = 6 のように解ける力も重要だと思うのだ。
 普通に生きていく上で。)
 
では、「方程式の威力を見せるのに良い問題」とは、どんな問題だろうか。
たとえば、ツルカメ算である。ああ、偉大なりツルカメ算。
まあ、一応、書きましょうか。
「ツルとカメがあわせて7匹(羽)います。足の数は24本です。それぞれ何匹(羽)?」
などという問題。
たとえば、ツルの数をxとおいて、
    2 x + 4 (7 - x) = 24
で、x = 2 と出すものだ。
 
これ、実は、初心者には難しい。
それは、この問題には、未知数が2つ(ツルの数とカメの数)出てくるからだ。
別の言い方をすれば、これは、本来、二元連立一次方程式で解く方が自然なのだと思う。
つまり、ツルの数をx、カメの数をyとおいて、
   x + y = 7
   2 x + 4 y = 24
として、解くわけだ。
 
第一式を使って第二式からyを消去すると、先ほどの一元一次方程式になる。
ツルカメ算をはじめから一元一次方程式で解ける人は、頭の中で、ちょっとした、
しかし、非自明な作業をしているのだ。
この作業は、普通は、教わらないとできないと思う。
 
いや、ま、いいでしょう。教えましょう。
 
そして、次はどうしようかというと、しばらく、ツルカメ算の変形バージョンを
やらせるしかないだろうと思う。
ツルカメ算の変形バージョンとは、
 
  ・本来、未知数が2つあって、2元連立が自然
  ・ただし、式のうち1つは(x + y = 7 のように)簡単で、暗算でyを消去できる
   (これは、2つの未知数が、和や差で結びつけることができる対等なものであり、
    実際、単純な和や差で結びついている・・・ということである)
 
というようなものだ。
これが、基本問題よりは複雑なものの中で、一番解きやすい問題だろう。
 
この辺で、娘いわく、「今やったの、ぜ〜んぶおんなじ問題じゃない?」。
おお、それに気がつくなんて偉いぞ。
でも、やっぱり練習は大事だからな。と、少しやらせた。
 
でも、、、やっぱり、このテの問題は、二元連立方程式で解くのが数学の醍醐味では
ないのだろうかとも思う。
 
その後に、問題集に出てくるのは、兄と弟が自転車に乗ったり乗らなかったりで
おいかけっこする問題や、塩水の問題。なるほど。
 
もちろん、問題集や数学の教育課程を批判しているわけではない。
だって、これ以外に、教える順序なんて思いつかないから。
では、何が言いたかったかというと、一元一次方程式の楽しさを教えるのは、
意外に難しいということだ。
 
後記:
上のような話を息子にしたところ、息子は、「現実はもっとつらい」と。
聞いてみると、2年生になると、1年生のときにやったものとまったく同じ問題
(ツルカメ算とその仲間たち)が出題され、しかも、今度は、
連立方程式で解きなさい。変数1つではいけません」と言われるのだという。
うぬ〜。その意図はわかる。
しかし、数学が好きな子には、厳しいかも。
いっそのこと、一元方程式の直後に二元方程式に進んだらいいのでわないだらうか?