数学息子

一時期4次元に凝っていた息子だが、最近、あまり話さなくなっていた。
で、「4次元について何か考えた?」と聞いてみたところ、「なんだか
忘れちゃったよ」と。
それを聞いて、残念な気もしたが、まあ、そういうもんかなと思っていた。
 
ところが、先日、下のような絵を描いていた。
 

 
まず、左の絵を描いて、「4面体を平面に書くと、こうでしょ?」と。
うん、うん、そうだね。
「だったら、5胞体を平面に書くとこうだよね」と右の絵を描いた。
「なわきゃーねーだろ」と即座に否定してしまったが、3秒ほど熟考して、
取り消した。「ごめん、確かに、そうだね」。
それから、息子はその絵をじっと眺めているので、どうしたのかと聞くと、
「5胞体は5つの4面体で囲まれているはずだから、その5つの4面体が
見えるかどうか見ている」という。
おおー。なんかすごいことやってるなー。
 
バカ親の息子自慢だが、書いておきたい。
息子には、小学生の時に、「点は0次元、直線は1次元、平面は2次元、
立体が3次元で、その先に4次元がある」と教えていた。
4次元は、たとえば、「普通の3次元空間+時間」の世界と考えられる、
とも教えた。「我々は3次元の存在のようだけど、本当は、時間方向
にもつながっているから、4次元の存在なんだよ」と。
 
しばらくしてから、息子が、「3次元マスク(最近流行ってる
立体的なマスク)っていうのは、この世界に一瞬だけ現れて消える
ものすごいマスクのことなんだね」と言うので、二人で大笑いした。
 
ある日、「3次元の世界では、平面と平面が直線で交わるけど、4次元の
世界では、平面と平面が点で交わるんだよ」と言ってみた。
これが私の知っているもっとも高尚な知識であって、それ以上のことを、
私は何も知らないし考えたこともなかった。ただ、息子に自分の博識
ぶりを自慢したかっただけだった。
ところが、1、2分黙っていたかと思うと、「じゃあ、4次元では、立体と
立体が平面で交わるんだね」と言うので、私は度肝を抜かされた。
・・・と、ここまでは、前にも書いたのだが、その後、息子に、どう
考えたのか問いただしてみた。
 
すると、息子は、私の話から、
 
 (交わるものの次元)+(交わるものの次元)-(全体の次元)
    = 交わった部分の次元
 
という式を考え出し、試していたのだとわかった。
(え〜と、上の式、あってますよね?)
「平面と平面が4次元で交わる」なら「2 + 2 - 4 = 0」で、交わった
部分は、0次元の点になり、「平面と平面が3次元空間で交わる」なら、
「2 + 2 - 3 = 1」で、直線になるわけだ。なるほど〜と感心した。
 
さらに私の度肝を抜いたのは、「4次元の世界には、5つの4面体で
囲まれたものがあるの?」という質問だった。
私はまったくわからなかったが、確かにありそうだと思い、ネットで
調べたところ、それが5胞体というものだとわかった。
(それが上に描いた図だ。)
 
聞いてみると、息子は、こんなことを言った。
「直線が3つあると3角形になる。3角形が4つあると4面体になる。
 だから、4面体が5つあると4次元の物体になると思った」と。
聞いてみれば、「1、2、4、8の次は何?答は16」みたいな発想だ。
それで、バカ親の私は、すっかり感激してしまった。
そして、現在に到る。
 
ところで、4次元というのは、何も「空間 + 時間」でなくてもいい。
たとえば、x軸に国語の成績、y軸に数学の成績をとって「国語と
数学の成績の相関」を考えることができる。これは2次元の世界だ。
ここで、「国語、数学、英語、理科、社会」を考えれば5次元になる。
この話をして「高次元の世界っていうのは、普通にあるもんだよ」と
言うと、最近なまいきな息子は、めずらしく神妙な顔をして、
「おやじ〜。今の話はおもしろかったよ」だって。
 
その息子、ちょっと前にNH○でやっていた「ポアンカレ予想を解いた人」
の話に感動したらしく、最近、なんでもトポロジーと言いたがる。
あの番組、トポロジーを持ち上げる一方で、私の愛する微分幾何学
おとしめるような作りで(でも、ペレリマン氏は、微分幾何を使って
解いたんですよね?)、ちょっと不満はあったのだが、見てよかった。