「自分のした苦労をさせたくない」と言ってはいけないという話

子供がまだかなり小さかった頃に読んだ育児書に、
 
 「自分はこれこれで苦労した。子供にはその苦労はさせたくない」と
 子供に言ってはいけない
 
という意味のことが書いてあって、いたく感心したことがある。
幼児期の育児関係のことは、本当に、ほとんど忘れてしまったのだが、これだけは
頭に残っていて、私の人生の指針にすらなっている。
 
「自分のした苦労を子供にさせたくない」という話はよく聞くし、ふと「その通り」とも
思ってしまい勝ちだが、これは、結局、「自分は、無駄な苦労、する価値のない苦労を
してしまった」ということを意味し、つまりは、自分の人生を否定することになるというのだ。
よく考えると、確かに、そういうことになるだろう。
しかし、親が自分の人生を否定してしまっては、子供は幸福になれない。
親は、「自分はこのような苦労をして、このような幸福な今がある」と言うべきなのだ。
たしか、その本にはそのように書いてあったと思う。
 
私は、よくこの話を思い出す。
私の人生は、(おそらく他の多くの人と同様に、)失敗のないものではない。
と言うか、むしろ、たくさん失敗があった。
「あのとき、こうした方がよかったのかな」と思うことも多々ある。
しかし、まあ、それらのすべてがあって、今があるのだから、「それでよし」と心の底から思う。
問題は、それを子供に、どう伝えるかだろう。そこで、いつも考えてしまう。
(結局は、自分の人生のとらえ方と、その表現の仕方であるわけだが。)
 
私にとって、それほどまでに重要な話なのだが、残念ながら、どの本にあったか
完全にわからなくなってしまった。
(これは、私が残念であるばかりでなく、その著者にも失礼な話で、大変申し訳なく思います。)