前にあったこと

相当昔のこと、当時の社長に社外であってしまい、話しかけられた。
常日頃、「型にとらわれてはいけない」と言う人だったが、そこでもそんな話をされ、
「ところで、○○君(私)、シンガポールは日本の島で言うとどのくらいか知ってるかね?」と聞かれた。
「はい。淡路島です」と即答した。当時、子供たちが幼く、そういう知識が私にもあったのだ。
 
しかし、社長は私の答をまったく意に介さず、
「知らないだろう。淡路島なんだよ。シンガポールというと、なんだかイメージがわかないが、
 淡路島と同じくらいと言われると、イメージがわくだろう。そういう発想が大事なんだよ」と
おっしゃって行ってしまった。
 
いろいろ学ぶことがあったが、私が答えられなかった場合のことを考えると、その場合は悔しかったと思う。
で、「知識があるって、良いもんだな」と思ったものである。
 
もうひとつ思い出した。
常々「柔軟な思考が重要だ」と主張していた当時の部長が訓示を垂れた。
(敬語表現だと、「垂れられた」?)
「雪が解けると何になりますか?」とおっしゃる。
もちろん、訓示に答える人はいない。黙って拝聴していると、
「大人なら"水になる"と答えるでしょう。しかし、ある子どもは"春になる"と答えたというんです」
「みなさんも、このような柔軟な思考を持つようにしてください」と続いた。
(一応言っておくと、この話、当時かなり話題になっていたのである。)
 
私は時々、世のみなさまの型にはまらない柔軟な思考に恐怖の念すら覚えるのである。