おっさんin代数幾何ワールド(途中まで)7

いよいよ佳境である(笑)。
 
第2章 スキーム 2.7 射影的射
φ : X --> P^n_A が A 射であるとき、
φ^*(O(1)) は X 上の可逆層で、大域切断 s_i = φ^*(x_i) で生成される。
逆に、L が X 上の可逆層で s_i ∈ L(X) で生成されるとすると、上のようなφがある。
このφが閉埋め込みであるのは、次の条件が満たされるとき、そのときに限る。
 (1) X_i = X_{s_i} がアフィン。
 (2) y_j -> s_j/s_i で定義される A{y_0,...,y_n] --> O_{X_i}(X_i) が全射
 
X を射影スキームとし、V が s_i で張られる部分空間とすると、
φが閉埋め込みであるのは、次の条件が満たされるとき、そのときに限る。
 (1) V の元は点を分離する。
   (P, Q ∈ X に対し、ある s ∈ V があり、s ∈ m_PL_P だが s ∉ m_QL_Q)
 (2) V の元は接ベクトルを分離する。
   ({ s ∈ V | s_P ∈ m_PL_P } は k ベクトル空間 m_PL_P/n_P^2L_P を張る。)
 
ネータースキーム X 上の可逆層 L は、X 上のすべての連接層 F に対し、
ある整数 n_0 > 0 があり、すべての n ≧ n_0 に対して F (×) L^n が大域切断により
生成されるとき、豊富であるという。
 
L をネータースキーム X 上の可逆層とするとき、次の条件は同値。
(1) L は豊富。
(2) すべての m > 0 に対し、L^m は豊富。
(3) ある m > 0 に対し、L^m は豊富。
 
L をネーター環 A 上の有限型スキーム X 上の可逆層とすると、L が豊富であるのは、
ある m > 0 に対し、L^m が Spec A 上非常に豊富であるとき、そのときに限る。
 
L が可逆層のとき、L が自明となる任意の開集合 U において、その同型射をφとする。
U を X を覆うように変化させると、{U, φ(s)} から X 上有効なCartier因子が定まる。
それを「 s の零点から定まる因子 (s)_0 」という。
 
X を非特異射影多様体、D_0 を X 上の因子、L = L(D_0) を対応する可逆層とする。
(1) 零でない元 s ∈ L(X) に対し、(s)_0 は D_0 に線形同値な有効因子である。
(2) D_0 に線形同値なすべての有効因子は、ある s から決まる (s)_0 に等しい。
(3) s, s' ∈ L(X) に対し、零点から定まる因子が等しいのは、ゼロでない λ があって、
  s' = λs であるとき、そのときに限る。
 
非特異射影多様体上の完備線形系とは、ある与えられた因子 D_0 に線形同値なすべての
有効因子の集合のことで、|D_0| と書く。

D_0 は (L(X) - {0})/k^* と一対一の対応がある。

 
完備線形系 |D_0| の部分集合で、射影空間として線形部分空間になっているものを
X 上の線形系 ∂という。
∂は部分ベクトル空間 V = { s ∈ L(X) | (s)_0 ∈ ∂ } ∪ {0} 。
∂の次元は線形射影多様体としての次元。
dim ∂ = dim V - 1 。
 
P ∈ X が ∂の基点とは、すべての D ∈ ∂ に対し、P ∈ Supp D となること。
 
i : Y --> X を k 上の非特異射影多様体の閉埋め込みとし、∂を X 上の線形系とする。
∂は X 上の可逆層 L に対して、L(X) の部分空間 V と対応している。
Y の可逆層 i^*L = L (×) O_Y を取り、自然な写像 L(X) --> i^*O_Y(Y) の V の像を
W ⊂ i^*L(X) とする。
このとき、i^*L と W を ∂の Y 上の跡 ∂|Y とする。
 
あ、さて、その、ま、ブローアップ。
 
(\) X をネータースキーム、S を準連接 O_X 加群の層で、次数付き O_X 代数の層の
  構造をもつものとする。さらに、S_0 = O_X、S_1 は連接 O_X 加群、また、
  S は O_X 代数として S_1 で局所的に生成されているとする。
 
X、S が (\) を満たすものとする:
X の開アフィン部分集合 U = Spec A に対し、S(U) = S|U(U) とし、
自然な射 π_U : Proj S(U) --> U を考える。
U_f = Spec A_f のとき、Proj S(U_f) 〜 π_U^{-1}(U_f) が言える。
これから、π_U^{-1}(U∩V) は自然に π_V^{-1}(U∩V) と同型になることがわかる。
これにより、スキーム Proj S(U) を貼りあわせて、
スキーム Proj S と射 π : Proj --> X を得る。
さらに、Proj S 上の可逆層 O(1) を得る。
 
このとき、
(1) πは固有射。特に、分離的であり、有限型。
(2) X が豊富な可逆層 L を持つとき、πは射影的であり、適当な n > 0 に対して、
  O_P(1) (×) π^*L^n は X に対して非常に豊富な P 上の可逆層となる。
 
X をネータースキーム、E を X 上の局所自由連接層とする。
S = (+)S^d(E) とすると、これは (\) を満たすので、P(E) = Proj S とする。
これを射影空間束という。
 
(1) rank E ≧ 2 であれば、S 〜 (+)π_*(O(l)) 。
特に、 l < 0 に対して π_*(O(l)) = 0 。
    l = 0 に対して π_*(O_{P(E)}) = O_X 。
    l = 1 に対して π_*(O(1)) = E 。
 
(2) 自然な全射 π^*E --> O(1) がある。
 
g : Y --> X を任意の射とする。
このとき、Y から P(E) へ X 上の射を与えることと、
Y 上の可逆層 L と Y 上の層の全射 g^*E --> L を与えることは同値である。
 
X をネータースキーム、I を X 上の連接イデアル層とする。
S = (+)I^d は (\) を満たすので、X~ = Proj S を考えることができる。
これを、連接イデアル層 I に関する X のブローアップという。
Y を I に対応する閉部分スキームとすると、X~ は X の Y に沿った(中心とする)
ブローアップともいわれる。
 
f : X --> Y をスキーム射とし、 I を Y 上のイデアル層とする。
「f^{-1}O_Y --> O_X」によるf^{-1}I の像で生成される O_X 上のイデアル
イデアル層の逆像といい、f^{-1}I・O_X(あるいは、I・O_X)と書く。
 
X をネータースキーム、I を連接イデアル層、
π : X~ --> X を I に関するブローアップとする。すると、
(1) I~ = π^{-1}I・O_X~ は X~ 上の可逆層である。
(2) Y が I に対応する閉部分スキーム、U = X - Y のとき、
  π^{-1}(U) --> U は同型射。
 
X がネータースキーム、I が連接イデアル層、
π : X~ --> X が I に関するブローアップとする。すると、
f : Z --> X が f^{-1}I・O_Z が Z 上のイデアルの可逆層であるような
任意の射であるとき、g : Z --> X~ で f = πg となるようなものが一意的に存在する。
 
f : X --> Y をネータースキームの射とし、 I を X 上の連接イデアル層とする。
X~ を I でのブローアップとし、Y~ を Y 上のイデアル層 f^{-1}I・O_Y とする。
このとき、四角の図式を可換にする f~ : Y~ --> X~ が一意的に存在する。
f が閉埋め込みなら、f~ もそう。
 
X が k 上の多様体とし、I が X 上の零でない連接イデアル層、
π : X~ --> X を I に関するブローアップとする。
(1) X~ も多様体
(2) πは双有理であり、固有かつ全射
(3) X が k 上準射影的(射影的)であれば X~ もそうであり、πは射影的射。
 
X を k 上準射影的な多様体とする。
Z を別の多様体で f : Z --> X を任意の双有理射影的射とすると、
X 上の連接イデアル I が存在し、Z は X の I に関するブローアップ X~ に同型。
また、f はこの同型のもとで、π : X~ --> X に対応する。