スポーツ勉強法 5

スポーツの指導では、「同じ練習」でもレベルや状況に合わせて「強調される意味」が変わると思う。
たとえば、「今日は正確さに注意するように」とか「今日は体力の限りやれ」とか。
 
さて、数学。
数学では、普通、最初に「やさしい問題」をやらせる。
「やさしい」とは「(工夫なしに)公式を適用すれば解ける問題」だ。
なぜそんな問題をやらせるかと言うと、初心者はまだ公式の諸々(公式自体や公式の適用法)を
理解していないため、その理解を深めるためだと思う。
つまり、初心者にとって「やさしい問題」は「考えるための問題」であり、次第に、
「公式を覚える(定着させる)ための問題」となる。
 
ここで重要なことは、学習者がそれを「公式を理解するための練習」だと理解していることだと思う。
(練習を繰り返せば覚えるので、「覚える」という意識は、「すぐ忘れちゃう」という事態が
 発生してから考えればよいと思う。)
そう理解しているなら、学習者は深く考え、それはいずれ花を開くモトになると思う。
もし、理解していないなら、学習者は「考える」という行為をせず、「パブロフの犬」と化すだけで、
将来の数学の進捗はあまり望めない。
 
初心者が「公式を理解したかどうか」を確かめるのは、実は難しいと思う。
しかし、まあ、一般的には、テストをやるしかないと思う。
初心者向きのテストは、当然、「公式を適用すれば良いだけのやさしい問題」だ。
そういう問題はできなければならない。
しかし、「そういう問題ができればよい」というのではない。
これは、あくまで、そこまでの学習が順調かどうかを見るための、(実は確実性の低い)簡単な
チェックに過ぎないのだ。
 
敢えて言うなら、そんなテストは、満点を取って当たり前なのだ。
しかし、である。
 
テストで満点を取った場合:
 公式をちゃんと理解した(ケース1)のか、パブロフの犬になっただけ(ケース2)なのか?
テストで満点を取れなかった場合:
 公式を理解する途中(ケース3)なのか、パブロフの犬になる途中(ケース4)なのか?
 
を考える必要がある。
もちろん、ケース1が良い。これは「すばらしい」のではなく「当然」の話だ。
ケース2は恐ろしい。本当に、恐ろしい。
普通の子供は、まず、ケース3かケース4を経由して、ケース1かケース2に移行する。
 
統計を取ったわけではないが、多くの子供は、ケース3だと思う。
その場合、指導者がやるべきことは、(気にかけながらも)「気長に待つ」だけだと思う。
ここで、テストの点数にこだわると、ケース3からケース4、ケース2に移行してしまう可能性が
高くなってしまうと思うのだ。
 
ここまで、上記のケース1だのなんだの細かい(細かすぎる?)話はともかく、結論としては、
多くの親御さんに賛成していただけると思う。
 
問題は、ケース3からなかなか抜け出せないときに発生する。
チェック問題なら、「クラスの大半が満点」なんて事がざらにある。
しかし、どうしても、満点を取るどころか、驚くほどできない子というのもいる。と思う。
はじめは「気長に」と思っていた指導者(先生や親、特に、親)も焦り始める。と思う。
すると、「公式を覚えてさっさとやりなさい」と言ってしまうかもしれない。
生徒がそれに従ったら、案外、満点取れるようになるかもしれない。ケース2として。
これは、なんとしても避けなければならないと思うのだ。
 
ちなみに、「まずケース2になって、それからケース1に行けばよい」と考える人もいるかもしれない。
実際、人それぞれなので、そういう事もあるかもしれないと思う。
(学習本・記憶本を書いている著者さんたちの中にはいるかもしれないと思う。全員ではないが。
 あるいは、ケース2のまま難関大学を突破するとか。それはある種の超人だと思う。)
しかし、それはたぶん極めてレアなケースだと思う。
ケース2になってしまったら。そこから、ケース1に行くのは難しいと思う。