解析入門I・数学とは美しきものかな

とうとう、解析入門I(杉浦光夫著)を、問題は飛ばして読み終えた。
美しい。こんなに美しい本を読んだのは、ランダウ以来だ。
(まあ、ランダウとは、違うのだが。)
何より、無駄がない。
杉浦先生の独特の才能なのか、数学者全般の傾向なのか、理論がきれいに
構築されている上、1つひとつの例も珠玉と言えるのではないだろうか。
 
私も大学の教養時代、おそらく日本中の理系学生同様、解析の初歩を勉強したの
だが、その当時、こんなにゆっくり本を読んでいるヒマはなかった。
だから、解析学に感動しながらも、味わうことはできなかった。
今こうして、何のプレッシャーもなく解析入門を読めたことは、幸いだったと思う。
(妻からは、「本を読むヒマがあったら家事をしろ」というプレッシャーを感じたが。
 いや、妻よ、ありがとう。)
 
ところで、ゆっくり読んでみて思うのだが、実数ってかなりあやしい。
「実数の連続性の公理」って、「本当」なんだろうかと思う。
私が学生時代恐怖した選択公理の世界と陸続きに見える。
「本当の実数」がそういうものでなければ、我々はとんでもない勘違いをしている
ことになるのだろうか。(ならないような気もする。)
まあ、公理を「本当か」と疑っても意味はないし、「本当の実数」なんてものも
ないのだろうが。
 
そうそう。
私が学生時代に使った教科書は、田坂隆士先生の「解析学入門」だった。
分量的には、こちらの方が、何も知らない1年坊には、向いているようにも思う。
ただ、もう、絶版のようだ。
これはこれで、大変感動した覚えがある。
(おかげで、いまだ私の本棚にある。もう何十年も開くことすらないのに。)
今、パラパラっとめくってみて、やっぱりいい本だと思う。
この本では、実数を「完備化」によって、「構成」しているのだった。
ン十年ぶりに再読してみようっと。